【オリーブ世界一の国 スペインから】
140超の小さな搾油所が点在するバレンシア州のオリーブオイル事情
【オリーブ世界一の国 スペインから】
Hola!! スペインでは、地理的に西アフリカに位置するカナリア諸島
神々しいオーラを放つ樹齢1000年超の千年樹の存在感
オリーブ栽培はバレンシア州でも紀元前から始まり、ローマ時代に「ローマに続く道」と言われたビア・アウグスタ沿いには今でもオリーブが栽培されています。特に北部には古樹が多く、千年樹(樹齢1000年を超える木)も珍しくありません。千年樹のオリーブの実だけでオイルを搾ることがあるほか、観光資源にもなっています。千年樹は州が管理しているため許可なく伐採したり、植え替えたりすることはできません。神々しいオーラを放つ千年樹の姿は、オリーブオイル好きなら一度は見ていただきたい圧倒的な光景です。
千年樹の収穫の様子を動画に録ってきましたので、ぜひこちらをご覧ください!(再生時には音が出ます)
クリックして動画へ:<幹の太い千年樹の収穫はツリーシェーカー(幹を挟んで揺する収穫機器)が使えず、重たい電動熊手で時間のかかる重労働>
小中規模の140を超える搾油所が州内に点在
その年によって変動はありますが、バレンシア州では年間2万~2万5000トンのオリーブオイルを生産しています。スペイン17州のうちでは第5位で、スペイン全体の生産量のたった2%を占めるに過ぎません。とはいえスペインの生産量がダントツ世界一なので、この量は2019-2020年シーズンのイスラエル一国の生産量(1.9万トン)を超えるのですよ。ちなみに日本の生産量は600トン強です。
バレンシア州では小規模生産者が主流なので、アンダルシア州にあるような広大な農園や大きな搾油所はありません。このあたりはイタリアに似ていると言われる所以です。現在は、小~中規模の140を超える搾油所が州内に点在しています。平地ではオレンジなどの果樹や野菜の生産が盛んなため、オリーブはどちらかというと山地や果実や野菜栽培には向かない土壌で栽培される傾向があります。山間地ではオリーブの段々畑も見られます。
70品種もの豊富な固有品種の宝庫
特徴として挙げられるのは、固有品種の種類が多いことです。ファルガ、モルー(モルーダ)、セラーナ・デ・エスパダン(セビジェンカ)、ビジャロンガ、ブランケタ、アルファファラ(アルファファレンカ、グロサル)、チャングロ・レアル、ロハル、ヘノベサ、カジョシーナ、カネテラ、ボリオレンカ、マンサニージャ・デ・カウディエルなどなどおよそ70品種もあるのだとか。日本の皆さんにはなじみのない名前が多いことと思います。どちらかというと、どれもマイルドな風味のオリーブオイルになります。
数ある品種の中で、ファルガ、モルー(モルーダ)、セラーナ・デ・エスパダン(セビジェンカ)、ビジャロンガ、ブランケタ、そしてコルニカブラの6つの品種で州の栽培面積の8割近くを占めます。コルニカブラはバレンシア州の固有品種ではなく、原産地であるカスティーヤ・ラ・マンチャ州と隣接する地域で栽培されています。
種類が多いこともあって、何代も続く農園では植えてあるオリーブの品種がわからないということもよくあります。また、小規模生産者が多いため、希少品種を単一で使っているオリーブオイルが欲しいと思っても、入手できないこともあります。品種ごとの収穫量が少ないので生産者はそれをまとめて収穫して組合に売ることも多く、私が住む町の隣町ヘノベスにはヘノベサという固有品種があるのですが、この品種を単一で搾ったオリーブオイルはない!と言われてしまいました。
オリーブオイルガイドブック編纂やローカルなコンテスト、マルシェも開催
さてさて、肝心なオリーブオイルの品質に関しては、まだまだ伸び代がある!といのが個人的な見解です。もちろん主要な国際オリーブオイルコンテストで賞をとるオイルもありますが、州全体で見るとまだまだでしょうか。でもここ数年はバレンシア州のエキストラバージン オリーブオイル・ガイドブックが編纂されたり、ローカルなコンテストやマルシェなどのイベントも開かれるようになり、少しずつですが生産者の意識の高まりが感じられます。わたしの地元なので、今後の品質向上に期待するばかりです。
アンダルシアのようなオリーブの海はないものの、千年樹や山のオリーブの段々畑など、バレンシアにも美しいオリーブのある風景があります。皆さんもぜひお越しくださいね。それでは、hasta luego!!