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OLIVE JAPAN®2026 から見えてきた傾向と注目すべき点

世界有数のテイスターが審査員として参加し、その年のオリーブオイルの品質が評価されるOLIVE JAPAN® 2026 国際オリーブコンテスト」 の結果が6月中旬に発表された。今年度のエントリー総数は801品。5月7日より予備審査ならびに5月27日〜29日の本審査により厳正な審査が行われた結果、最優秀賞8品、多田俊哉オリーブオイルソムリエ®特別賞10品、金賞374品(うち21品が新設のテーブルオリーブ部門)、銀賞228品(うち10品がテーブルオリーブ部門)、ならびに各国ベスト賞、マーガレットエドワーズ記念特別賞1品が選ばれた。編集部はコンテストを運営する日本オリーブオイルソムリエ協会の多田俊哉理事長に、コンテストから見えてきた傾向と注目すべき点を伺った。【 OLIVE JAPAN®2026 から見えてきた傾向と注目すべき点 】

OLIVE JAPAN®2026 から見えてきた傾向と注目すべき点

【画像提供:日本オリーブオイルソムリエ協会】

審査会までの道のりは、例年とは少し違った

編集部:今年は5月7日より予備審査、5月27日〜29日に本審査が行われたようですが、今年度ならではの特徴的なことはありましたか?

多田理事長:実は今年は例年以上に運営上の苦労が多かったです。まず審査員の招聘が大変でした。ウクライナ情勢から始まり中東情勢の影響もあり、世界が不穏な状況で、審査員の皆さんが来日する手段が限られてしまったり、航空券の価格が倍になってしまったり、審査のために来日する手段の道が閉ざされてしまった方も複数いて、審査員を招聘するのに2転3転しました。幸い調整は必要でしたがスペイン、イタリア、モロッコ、チュニジア、トルコ、オーストラリア、アルゼンチン、チリ、そして日本の素晴らしい17名の審査員が参加し例年通りの厳格な審査会を行うことができました。

審査会場の共通言語は英語だが、オリーブが共通言語となり各国から集まった審査員間で厳格且つ和やかな議論が交わされる【画像提供:日本オリーブオイルソムリエ協会】

また、コンテストの出品者によってはサンプル商品を何回日本に送っても当事務局に届かず残念ながら出品に至らなかった生産者もいたようです。主催者側はHP上でDHL利用を推奨していたのですがFEDEX、UPS、郵便小包等で送られてくる出品者も多く発送手段が明暗を分けたとも言えます。OLIVE JAPANのような国際コンテスト運営には、世界情勢の影響は避けられないことを実感しました。

極めて低いエントリー商品のディフェット率

編集部:審査会前から緊張感のある展開だったようですが、エントリー商品に今年ならではの傾向はありましたか?

多田理事長:エントリー総数はほぼ例年通りだったのですが、嬉しい驚きがありました。それはエントリーされたオリーブオイルの品質レベルが全体的に高く、ディフェット(オリーブオイル本来の品質や風味が損なわれた欠陥オリーブオイル)の比率が全体の20%を切り、極めて低かったことです。出品者の皆さんが自主的にいいものを見極めてコンテストに出していただいたおかげで、夢のような世界が実現しつつあると感じました。

編集部:エントリーしたオリーブオイルの国ごとの傾向を教えてください。

多田理事長:まずはスペインですが特筆すべきは、最優秀賞の中にスペインの主要品種であるピクアル種が一つも入っていなかったことです。コンテスト開始以来たぶん初めてのことで、多田俊哉特別賞に1品入っただけです。ピクアル種単品のエントリーは40〜50商品ほどありましたが、最優秀賞受賞がなかったのは極めて異例のことです。

スペインのピクアル種に感じた異変

多田理事長:理由は、スペイン産のピクアル種に加熱臭を感じるオーバークック商品が多かったことです。ただ、その生産者の顔ぶれを見ると実力のある生産者も多く、製法が失敗したということではないと感じました。では何が原因なのか? 仮説としては、気候変動により果実の特性やキャラクターが変わっていたのではないかということが考えられます。スペインでは大規模な干ばつが2年続き、オリーブの木は耐えられたが、果実の風味特性までは戻ってないのではないかと推測しています。一大生産地のハエン一帯、北から南へ100キロ離れている生産者でも同じ傾向が見られたのです。干ばつの被害を受けた果実が影響を受けて、それを搾ると風味の特徴が変わってしまったのではないかと感じています。

先が少しとがった形状で艶のあるピクアル種。2026年大豊作と言われている今年秋搾油のピクアルのオリーブオイルが待ち望まれる

スペインを訪問した際に目にしたのですが、顕著な兆候としては収穫後期の12月や1月でも実は緑で硬いままで果実がなかなか黒く成熟していかず、そのことと風味の変化は無縁ではないと思われます。

多田理事長:オリーブオイルのポリフェノール含有量はその年の気候で大きく違ってきます。北半球の場合、8月、9月の降水量による水分の少なさが影響します。干ばつになるとポリフェノール含有量は増える傾向になるのですが、ポリフェノールには抗酸化作用があるので、熟成を妨げる傾向があります。この時期の水分量はオイルにした時の風味に密接に関わっていると思われます。

2026年のスペインの作柄は大豊作と聞いています。ダムの貯水率も80%を超えています。去年の今頃は30%、一昨年は20%を切っていました。雨が振らなくてもダムを使い灌漑を行えば、理想的な水のコントロールは問題なくできるはずで、今年は生産者が品質をコントロールしやすい状況にあると思われるのでまた品質は戻ってくるのではないでしょうか。

絶好調のイタリアのコラティーナ種

多田理事長:一方で、今年のイタリアのコラティーナ種は絶好調だったと思います。今年は本当に困りました。コラティーナ種だけで最優秀を10個ぐらい出さないといけないかと思うぐらい激戦で、多田俊哉特別賞含め7〜8品受賞しており、品質的には当たり年だったと思います。

嬉しかったのは、ラツィオ州の主力のイトラーナ種は素晴らしい品種で毎年200品ぐらいイタリアで作られていますが、ここ3年ぐらい振るわずで品種の特性が変わったのではないかと思っていたのですが、今年久しぶりにイトラーナで最優秀賞が1品出ました。そしてその風味は、昔の素晴らしかった特性と変わらず素晴らしいものでした。

ヨルダンの伝統を守り作られた注目のオリーブオイル

多田理事長:今年のもう一つのトピックはヨルダンです。ヨルダンに高品質のオリーブオイルを作る生産者が現れ、世界中のコンテストに出品し賞を獲りまくっています。ボトルのデザインも洗練されていて、この生産者はOLIVE JAPANの5出品のうち、3つは金賞を獲得しています。残念ながら、日本では購入することはできないのですが、ヨルダンの伝統的品種のオリーブオイルで今後が注目です。

伝統的なナバリ種は干ばつに強い品種で灌漑もない環境下で、通常は2月から3月にかけての完熟オリーブを搾油するのですが、この生産者は、適宜灌漑を行いながら10月頃に早摘みを行って、マイルドな風味の中に苦み辛味も十分で複雑な風味のオリーブオイルを作っています。

2年連続最優秀賞のチュニジア産のオリーブオイル

多田理事長:チュニジア産のオリーブオイルが最優秀賞2年連続で受賞したことは嬉しい驚きでした。昨年は半分ぐらいまぐれかな?と思っていたのですが、とんでもなく昨年と変わらない高品質で確固たる実力のある生産者でした。チュニジアからはこの他にもエントリーが増えていて日本にも入ってきているのですが、従来からあったミディアムハイの品質のオリーブオイルだけでなく、国を上げて高品質オリーブオイルの生産にも力を入れ始めていることがわかります。

Best of Japanを受賞したのはミッション単一品種

多田理事長:日本の生産者も力をつけてきているようです。ただ、今年に限ってのことではないのですが、炭疽病(たんそびょう)が日本の生産者に呪縛のように重くのしかかっていることは課題かもしれません。炭疽病は、細菌が原因で実や枝に黒い斑点や腐敗を引き起こすオリーブの代表的な病気です。発病した実が混入するとオリーブオイルの風味が落ちるため、多くの生産者は炭疽病に耐性のある品種、ルッカ種を植え、大半がルッカを主体としたブレンドになっているのが現在の国産オリーブオイルの傾向です。

一方で、ルッカという品種はシナモンの香りが強く、それがメリットでもあり、ディスアドバンテージにもなり得ます。複雑性を出すにはシナモンの香りが強すぎるのです。金賞までは獲れてもそれ以上を狙うにはルッカのブレンドでは難しさもあるかもしれません。今年、Best of Japan に輝いた商品はミッション単一品種でした。ミッションの方がルッカに比べてスパイシーさとフルーティーさ出しやすく、またブレンドによって苦くて辛くて、フルーティーな複雑な味わいを出すことも可能ではないでしょうか。

多田理事長:その他にコラティーナ、イトラーナ、オヒブランカ等の品種に挑戦している生産者もいますが、海外列強トップに敵うかというとそこまで行くのは簡単ではなさそうです。日本のサッカーのように全体的なレベルは上がっていますが、世界トップレベルのメッシにはなかなかなれない。一部の生産者さんたちはだいぶ良いところまで品質を上げてきていますが、強度をもう少し出してほしいですね。一次予選は突破して、決勝ラウンドに入るところまできているけれど、世界ランキング一位と戦うには基礎的な強度が足りないという感じです。

新領域のテーブルオリーブ審査への挑戦

編集部:なかなか、手厳しい率直な評価をありがとうございます。今年度はテーブルオリーブ(オリーブの実の漬物)の審査も初めて行われたようですが、審査会の様子はいかがでしたか?

多田理事長:テーブルオリーブの審査は初年度でしたのでなかなか予想が難しかったのですが、40品超のエントリーがありました。オリーブオイルの審査会前日にテーブルオリーブの先行審査会を5人ほどの審査員が集まり行い、最終的には全員審査で1セッション行い最終確認をして賞を決めました。

OLIVE JAPAN®2026 から見えてきた傾向と注目すべき点

モロッコの審査員であるアン・ターリー氏と共同で作ったテーブルオリーブの評価シートを用いて審査は行われた

募集方法、審査のプロセス、プロトコルづくり、審査基準の開発や審査員の教育まで0から手探りでした。幸い、海外から参加した殆どの審査員はIOCのテーブルオリーブのテイスティングコースや研修を受講していたので、ほとんど同じ基準でスタートできました。今回はテーブルオリーブの先行審査会に海外の審査員の皆さんとわたしも一緒にテーブルに座り、ディスカッションを行いました。オリーブオイルとは別のテーブルオリーブ専用の評価シートも必要で、昨年1週間モロッコに行き、現地の審査員であるアン・ターリー氏の研究所でスタッフと一緒にテーブルオリーブのテイスティングを行ったり、プロトコル研究を行い共同でテーブルオリーブの評価シートを作りました。

 

審査のプロトコルはオリーブオイルとはだいぶ異なります。味わいの複雑性や持続性は一緒ですが、歯ごたえや外観という評価ポイントもあります。審査のポイントの議論を行い、意識を統一して審査に入ったのですが審査を実際にやってみたら、意外と順調に皆の意見が一致して審査が進みました。初年度なので大量のサンプルが来てしまうと困るかなと思っていたので今年はちょうど40〜50のエントリーはほど良い数でした。もう少しエントリーが増えれば最優秀賞を受賞する商品も出てくるのではないかと思います。

編集部:海外のテーブルオリーブと日本のテーブルオリーブは製法が違うので同じ評価基準での審査は難しかったのではないでしょうか?

地中海沿岸の国々ではワインやビールの定番おつまみとして定着しているテーブル。料理で楽しみたい人向けに郷土料理のレシピはこちらから

多田理事長:日本のテーブルオリーブはほとんどが新漬けです。海外には発酵していないテーブルオリーブはないので、海外の審査員にとって日本のテーブルオリーブは未知の領域でした。国内からも1品だけ出品があり議論をしつくした結果、銀賞となりました。発酵していない分、味の複雑性の評価がなかなか伸びませんでした。来年もテーブルオリーブの審査会は行うので、ぜひ皆さんエントリーに挑戦してみてください。テーブオリーブの審査基準は、見た目、味覚と香り(複雑性、持続性)、基本的な味覚(酸っぱい、甘い等)そして食べた時の歯ごたえとなっています。

マルシェは本当に今年が最後なのか?!

編集部:最後に、コンテスト受賞オリーブオイルとテーブルオリーブが販売されるオリーブイベント、OLIVE JAPAN SHOW ☆まるしぇのこの形式での開催は今年が最後というのは本当ですか?

多田理事長:はい、これまでの形式のマルシェは今年で最後でした。この決断をした背景には2つの理由があります。一つはマルシェの建付けの構成の問題です。コンテストに出品してくれた協会の会員企業が受賞した商品を売る機会をできるだけ低廉なコストで提供したいというのがマルシェの基本的な目的でした。ただ、これは要するにほとんどの費用(審査員の招聘費用、マルシェの会場費、装飾費や運営費等)はコンテスト収益の中で協会が払い、場を提供していることで成り立っていたのですが、ここ数年のホテルや会場費の値上げが半端なく、今の会場費用はコロナの2021年から当初の約4倍になりました。結果、コンテスト収益だけで賄えないという状態になっているのが現状です。

もう一つは、協会が主催するマルシェに需要があるのか?という点です。出店者は毎年続けてほしいと言ってくれるのですが、出店者数は年々減っているのが現状です。開始した当初は30社以上の出店がありましたが今年は20社程度、会場費を賄うためにビアサーバー、ウオーターサーバー等代理店に参加してもらいました。出店する人も減ってきて、出店者集めに奔走する状況には開催の疑問も感じます。

OLIVE JAPAN®2026 から見えてきた傾向と注目すべき点

今年最後のOLIVE JAPAN SHOW ☆まるしぇ 各ブースで2日間、賑やかなオリーブトークが繰り広げられていた【画像提供:日本オリーブオイルソムリエ協会】

編集部:もし、会場費が抑えられる開催場所があれば、継続も考えられますか?

多田理事長:もしそのような場所があり、会場費が建付けに収まるところがあれば、できるかもしれません。ただ、そのような条件の場所の確保は容易ではないでしょう。ホテルはオープンパブリックとはいってもクローズド空間なので、できれば屋内でオープンパブリックな商業施設のような場所があると良いのですが。以前開催していた二子玉川も天候に左右されました。風でテントごと飛んでいってしまったこともありました。時期によって暑かったり、寒かったりもあり、快適性からも品質の面からもいまさら屋外には戻れないです。ただ、わざわざ九州から来てくださる方もいて、これだけの高品質オリーブオイルをテイスティングして買える場所はないので、マルシェ開催に良い条件の場所があれば、ご紹介いただきたいと思います。

編集部:多田理事長、お忙しい中、審査会とマルシェに関するお話を伺わせていただきありがとうございました。早くも2027年コンテストのエントリーが10月にもスタートするそうですね。ただその前に、いましか出会えない!一期一会の2026年受賞オリーブオイの数々を様々な料理で味わってみたいと思います。本日はお話をお聞かせいただきありがとうございました。

OLIVE JAPAN®2026 から見えてきた傾向と注目すべき点

エントリー総数801品から厳正な審査の結果、OLIVE JAPAN® 2026 国際オリーブオイルコンテストで最優秀賞に選ばれた8品 【画像提供:日本オリーブオイルソムリエ協会】

※OLIVE JAPAN®2026受賞全商品は「eオリーブオイル選び」の検索ページ「オリーブオイルを探す」から受賞メダル、生産国、国内販売有無や風味の傾向等で検索できます。ぜひ世界のオリーブオイルを楽しまれる際にご活用ください。

   
     
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