オリーブオイルに豊富なオレイン酸の健康効果
こんにちは。医師でマスターオリーブオイルソムリエ®︎の浅井洋貴です。前回の記事ではオリーブオイルを取り入れた地中海式食生活で、心臓血管リスクの高い人たちの発症が予防されたという論文を引用して、オリーブオイルの健康効果を示唆しました。そこで今回から、オリーブオイルを食べると体の中でどんなことが起こっているのかお話ししていきたいと思います。【 オリーブオイルに豊富なオレイン酸の健康効果 】
悪玉コレステロールも実は体には必要な脂質。でも・・・
食用油の特徴は、その油を構成する脂肪酸の種類で変わってくるのですが(油脂の細かい構造に興味がある方は農林水産省のページもご参照を!)オリーブオイルの最大の特徴は、その脂肪酸の大部分が、一価不飽和脂肪酸である皆さんも一度は聞いたことがある「オレイン酸」であるということでしょう。オレイン酸の特徴としては、血中の善玉(HDL)コレステロールを減らさずに、悪玉(LDL)コレステロールを減らすということが示唆されています。
善玉、悪玉というと、とにかく悪玉(LDL)が目の敵にされてがちですが、LDLコレステロールは肝臓で作られたコレステロールを体内の各組織に運ぶ大事な役割を担っていて、実は身体にとっては必要なものです。ただ余剰になったLDLコレステロールが血管に蓄積してしまうと、それが動脈硬化を進行させて心臓や脳の血管が詰まりやすくなってしまいます。(動脈硬化自体は加齢と共に必ず起こるものです。)
心臓の血管、とりわけ心臓を覆っている冠動脈という血管があるのですが、この血管の流れが悪くなると、心臓に十分な栄養が行き渡らなくなり胸が痛くなる狭心症、さらに進んで心臓の筋肉が壊れてしまう心筋梗塞になってしまいます。そうなるともはや生命の危機です。
オレイン酸には余分な悪玉コレステロール数値を下げる効果がある
もちろん、この過剰なLDLコレステロールの治療の主体となるのは病院で処方される内服薬です。特に、遺伝的に数値が高い方は、薬で抑えないと困難でしょう。
一方で、できれば薬に頼らずに日々の食生活や運動でなんとか数値を下げられないかと思うのも人情でしょう。そのような方には、私は普段の診療で、日々使う油をオリーブオイルに替えてみることをお勧めしています。
それだけで劇的に数値が半分になるなどということはないのですが、数値を改善したいという思いから食事の内容を変えるという意識があるだけで食事に気を遣うようになり、結果的にLDLコレステロールの数値が改善するという方も一定数いらっしゃいます
健康効果の役割をオレイン酸だけが担っているわけではない
しかし、LDLコレステロールを下げるからといって、オレイン酸含有量のみに目がいってオリーブオイルを選ぶのもまた疑問です。一口にオリーブオイルを構成する脂肪酸はオレイン酸がメインと言っても、品種によりその割合は50%台から80%台まで様々です。ではオレイン酸含有量が高いオリーブオイルの方が健康効果は高いかというと、さすがにそこまでの比較試験を行った大規模な臨床データはないでしょう。
逆にオリーブオイルに含まれる、オレイン酸以外の、ポリフェノールなどの抗酸化物質による健康効果も研究データが出ています。その話はまた次回以降にお伝えしていこうと思います。
今回のポイントとしては:
- オリーブオイルの健康効果として、コレステロールのバランスを改善させる効果がある
- 心血管イベントなどの動脈硬化性疾患の予防に繋がる
- 健康効果の役割は、オレイン酸だけが担っているわけではない
以上を考えながら、あくまで美味しい食事に彩りを与える調味料として、オリーブオイルを楽しんでいただけたらと思います。
では今回はこの辺りで。