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最新オリーブオイルの真実から見えるオリーブオイルの使いこなし術《2021年版》

世界中の生産者たちに最も良く知られた国際オリーブオイル品評会は、実は日本で開催されています。それが「OLIVE JAPAN®国際オリーブオイルコンテスト」です。

このほど、その2021年版が開催され受賞者が発表されました。

主催者であり、長年にわたって世界のオリーブオイル動向をつぶさに見てきたオリーブオイル使いこなし術の達人、日本オリーブオイルソムリエ協会理事長の多田俊哉さんに、今年のオリーブオイルの美味しさの特徴と使いこなしのヒントを教えていただきました。【 最新オリーブオイルの真実から見えるオリーブオイルの使いこなし術 】

●オリーブオイルには熟成もビンテージも無い

前回の寄稿で、オリーブオイルは「生のジュース」であるとご紹介した通り、オリーブオイルには熟成もビンテージも無い。「品質」に関していえば、詳しいことは知らなくとも新しければ新しいほど良い、ということは断言できる。もちろん良くできたオリーブオイルなら、たとえ2年たってもその素晴らしい品質を十分楽しめるけれども、やはり新鮮なものの方が断然美味しい。

最新オリーブオイルの真実から見えるオリーブオイルの使いこなし術

図1 OLIVE JAPAN® 金賞ロゴ2021年版

オリーブオイルは、北半球の主産地では毎年秋から冬にかけて収穫され搾油されるため、日本でも春先には店頭のオリーブオイルが最新のものに切り替わる。生産年や最新のコンテストの受賞ステッカー表示が確認できれば、間違いなく最新の新鮮なものが瓶に詰められている、という意味で品質の目安になりうる。そう、コンテストの受賞ステッカーに年号が入っているのも、そんな大事な意味がある。

ここでふと疑問が生じるかもしれない。そもそも毎年生産されるオリーブオイルは、年ごとに品質のブレのようなものが生じるのか?あるいは、年によって品質や味わい、美味しさが違うものなのか?

オリーブオイルも基本的には農作物なので、年による出来不出来の影響は大きく受ける。他の食用油のように瓶詰されて店頭に並んでいると忘れがちであるが、オリーブオイルはそれらの食用油とはつくりが根本的に違う。何といっても「生のジュース」だから、作柄はとても風味に影響するし、オリーブオイルの大きな特徴はその風味にあるわけだから、年による作柄の変動は使いこなしにも直結する。

長年作り続ける優秀な生産者なら、収穫時期や搾油方法、ブレンドの工夫などで毎年ほぼ同じ風味を作ろうとしているけれども、それでもやはり風味の違いは出てきてしまう。つまり、その年のオリーブオイルの出来映えは、まさに「一期一会」。同じものには二度と出会えないし、後からあの年は素晴らしかった、などとどんなに懐かしんでももうその味には出会えない。それがまたオリーブオイルを味わう大きな魅力となっていて、あたかもボジョレーヌーボーのように私たちは新油を心待ちにする。

さて、では最新の2020年/2021年シーズンのオリーブオイルの品質動向はどうだったのだろうか。

●空前の高品質だった2020/2021年産オリーブオイル

オリーブオイルの品質は年々向上している。平均的な品質レベルが上がっていると同時に、素晴らしいオリーブオイルを毎年作る高品質生産者によるオリーブオイルも、年を重ねるごとにさらに品質を高めている。農業生産や搾油に関する技術の向上が、こうした品質向上に大きく貢献しており、世界のオリーブオイル生産の最先端は、実は品質向上にしのぎを削るハイテクな世界なのだ。

品質向上とともに顕著なのが、品種特有の個性的な風味をより明確に演出する傾向である。例えば世界で流通するオリーブオイルのおそらく40%は占めるであろうスペイン・アンダルシア州の主力品種であるピクアル種。ほんの20年くらい前までは、この品種の風味個性など誰も語らなかったが、今は全く違う。未熟なオリーブ果実を収穫すれば青リンゴやトマトが薫り、完熟果実を搾ればパイナップルや熟したバナナの甘い香りを醸す。それが当たり前のように考えられ、さらに複雑な香りや味わいを引き出すことを競う。それが、いまのオリーブオイルの品質を競うカギになっている。

こうなってくるとコンテストでの審査も本当に大変だし、またその結果を伝えるコミュニケーションの方法も工夫が求められる。単に、一等賞や二等賞を決めるために品質の優劣を数値で序列化することは、コンテストといえどもますますナンセンスになってくる。

2021年のコンテスト結果を見ると、空前の高品質化を感じるとともにかつてないほど多様な風味をもった高品質オリーブオイルがたくさん作られていることを痛感させられる年となった。

●使いこなしの基本は風味の見極めに尽きる

料理にオリーブオイルを使うことが今の日本で当たり前になってきていることは、テレビの料理番組でもレシピに「オリーブオイル」と目にすることが多くなっていることでも良く分かる。その際思うのは、せっかくの料理番組なのだから、オリーブオイルを他の油と同じように扱われては困る、ということ。「困る」というよりも、オリーブオイルの真価をわかっていない、というべきか。

そう、オリーブオイルの料理での使い方は、塩や胡椒、砂糖などの使い方にかなり近い。つまり、オリーブオイルによって料理の「味」を決める、ということである。そのためには、どんな風味のオリーブオイルを料理に使うのか、まで特定して、どんな風味をオリーブオイルに出させるか、まで語らなければ「料理番組」とは言えないし、「レシピ」とも言えない。

そんなにオリーブオイルによって風味が違うの?と考える方は、ぜひ南イタリア・プーリア州産の良くできたコラティーナ種と、シチリア島産のトンダイブレア種のオリーブオイルを食べ比べてもらいたい。苦瓜のように強い苦味のコラティーナ種とこってりとした甘みをたたえるトンダイブレア種の風味の違いに驚くはずだ。同じ南イタリア産でもこれだけ違う。生産国が違えばその風味の違いはものすごく大きいことは想像に難くない。

使おうとしているオリーブオイルの風味がわかってこその料理である。前述の比較で言えば、ホタテの生の刺身にコラティーナ種を使おうとすることがどれほど無謀でホタテの風味の良さを消してしまうか、おわかりだろう。でもトンダイブレア種を使えば、ホタテの甘みをさらに引き出すとともにさわやかな風味をまとわせることに成功する。これこそが「料理」ではないだろうか?

●世界初!オリーブオイル風味インデックスTMの誕生

生のホタテの刺身に良く合うオリーブオイルは、OLIVE JAPAN® 国際オリーブオイルコンテストで最優秀賞を取ったオリーブオイルなのか?あるいは金賞、銀賞のいずれのオリーブオイルなのだろうか?世界中の名だたる専門家を集め1週間以上もかけて緻密かつ正確に審査を行っても、これまでのコンテストの発表結果だけでは、その答えは得られなかった。

先にも申し上げた通り、いま作られている高品質オリーブオイルは、技術の深化によってもはや「偽物」や「ホンモノ」といった品質規定を飛び越え、個性を競う時代に確実に入っている。そしてオリーブオイルの料理での使いこなしも、そうした風味の個性を生かして料理を演出する、それが無ければ、すぐれた料理・料理人とは言えないというところまで来ている。

ならばオリーブオイルのコンテストも、定量化されたメダルの優劣だけではなく、定性的な評価をもっと公表して、ホタテに良く合うオリーブオイルを選ぶ目安を提供できないだろうか?

最新オリーブオイルの真実から見えるオリーブオイルの使いこなし術

図2 オリーブオイル風味インデックスTMの表示

こうして誕生したのが、世界初となる「オリーブオイル風味インデックスTM」である。消費者が、オリーブオイルを料理に使いこなすことを想定して、必要となる風味の特徴を可能な限り多くかつシンプルに盛り込んだ、そんな指標を目指して開発した。

インデックスは、味覚(味)の個性と香りの特徴、そしてちょっと耳慣れない「レトロネーザル」という言葉の3軸でオリーブオイルを評価し、各軸で最も顕著に感知できる風味をハイライトすることとした。「レトロネーザル」は、喉から鼻に抜けていく香気のことで高品質オリーブオイルでは良く感知されるものではあるが、あえて耳慣れない言葉を使うことでオリーブオイルの評価であることを強調したかった。

いずれにせよ、これで開栓してテイスティングしなくても求める風味のオリーブオイルを買うことができる。そしてインデックスに表示された風味を活用して料理にその風味を生かすことが可能になった。これは、オリーブオイルの販売現場のあり方を180度転換させるといっても過言ではない、画期的なものだ。

なぜなら、このインデックスによってはじめて、「調味料」や「スパイス」としてのオリーブオイルを買い求めこれを使いこなす土壌が整った、といえるから。ぜひ、売り場のオリーブオイルに目を留めてこのインデックスを確認、使いこなしに活用してもらいたいのである。(多田俊哉)

 

※「OLIVE JAPAN」、「オリーブオイルソムリエ」及び「オリーブオイル風味インデックス」は一般社団法人日本オリーブオイルソムリエ協会が保有する登録商標です。(出願中を含む)

   
     
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