最新テクノロジーで学べる オリーブ農園運営ビジターセンターに見るオリーブ業界の未来【オリーブ世界一の国 スペインから】
Hola!! そろそろ早いところではオリーブの花が散り、枝には小さくかわいらしい果実がポツポツと並んでいます。4月にオリーブオイル生産者フィンカ・ラ・ポンテスエラ(Finca la Pontezuela)が農園内に作ったビジターセンターを訪問し、想像を超える設備と内容の充実ぶりに感動したので、今回はそのレポートをしたいと思います。【 最新テクノロジーで学べる オリーブ農園運営ビジターセンター 】
フィンカ・ラ・ポンテスエラの農園があるのは、スペイン中央部トレド県西部。ラ・マンチャの赤い大地にオリーブ畑が広がり、他の産地とは異なる風景を見せてくれます。この辺りにはカサス・デ・ウアルドやマルケス・デ・グリニョンといった高品質エキストラバージン生産者の農園もあります。冬の寒さが厳しく、夏は暑く乾燥した気候がオリーブ栽培に適しているのだとか。そうは言っても今年1月の大雪の被害は大きく、車窓からは雪の重みで枝が折れたオリーブの木や雪で全滅した超高密植栽培法の畑を目にし心が痛みました。
フィンカ・ラ・ポンテスエラはおよそ400ヘクタールを超える敷地で、オリーブのほか穀物やアーモンドを育てています。昨年の12月、農園内にオレオツーリズム(オリーブオイルツーリズム)の一環としてビジターセンターがオープンしました。写真や動画を見ると、一生産者が運営しているレベルを超えていることが伝わってきて、ぜひ行ってみたいと思っていたところ早くも願いが叶いました。
ビジターセンター内ではビジターはヘッドフォンをつけてまわります。最初に暗闇の中にCGの女性が浮かび上がり、ビデオでこの土地の環境についての説明があるのですが、一時は絶滅の危機にあったイベリアオオヤマネコもいると聞いてびっくり。畑を車でまわっている時には、ノロジカやエジプト・
次のコーナーではオリーブの木の説明があります。真ん中に移植された百年樹の幹のまわりをぐるっと回ると、1年間のオリーブの木の移り変わりを見ることができます。作りものの枝には、5月のところでは花がついていて、10月のところでは青い果実、12月では黒く熟した果実がなっている、といった具合です。とてもわかりやすく感心しました。
もちろん壁のパネルでも詳しく説明されており、栽培コーナー、搾油コーナー、官能的特性コーナーと続くのですが、どこも内容が充実している上、最新のテクノロジーが駆使されているので、子どもはもちろん大人でも楽しく学べるように工夫されていました。
最後はテイスティングなのですが、ここのテーブルがまたハイテク! テーブルがまるでスクリーンのように使われるのです。
こちらからビジターセンターの様子を動画で覗くことができるのでよかったらご覧ください。
オレオツーリズムの標準コースは、大人1人10ユーロで所要時間は約75分。オーディオルームで短いビデオを見た後、搾油所とビジターセンターの見学、そして3種類のオリーブオイルのテイスティングがついています。VIPコースはこれに畑の見学、テイスティング時のチーズとのマリアージュ、そして500mlボトルのお土産がついて90分、50ユーロになります。
これまで見たことがあるオリーブ博物館的な施設は歴史に重点を置いたものが多かったのですが、ここはまさに“今”を見せていると同時に、最新テクノロジーの導入によって未来すら感じさせます。よくぞこんなに素晴らしい施設を作ったものだと感服するばかりです。オリーブオイル生産が単なるビジネスであれば、時間とお金を費やしてビジターセンターを建てる必要はありませんね。ここまですることに生産者のオリーブ愛と情熱を感じます。それとともに、オリーブオイルは他の食用植物油とは一線を画し、ひとつの文化を形成していることを強く感じました。
マドリードから車で1時間半と不便な場所にあるのですが、機会があればぜひとも足を運んでみてください。(田川敬子)
Finca la Pontezuela フィンカ・ラ・ポンテスエラ Centro de Interpretación ビジターセンター