千年樹の果実だけを搾った希少なオリーブオイルを訪ねて
【オリーブ世界一の国 スペインから】
世界でもっとも千年樹が密集する地域でつくられる
千年樹の果実だけを搾った希少なオリーブオイルを訪ねて
【オリーブ世界一の国 スペインから】
Hola!! オリーブの木は長寿で知られていますね。スペインでは樹齢100年以上の木を百年樹(olivo centenario)、1000年以上の木を千年樹(olivo milenario)と呼んでいます。スペインの北東部には千年樹が密集している地域があるんですよ。今日はそこでつくられている千年樹オリーブオイルの話です。
バレンシア州、カタルーニャ州、アラゴン州の州境周辺は、世界でもっとも千年樹が密集している地域として知られています。ここでは3州の計27の自治体が集まってタウラ・デル・セニアという地域振興の組織(Mancomunitat Taula del Sénia)をつくっています。
21世紀に入って千年樹が遠方に売られて行くケースが目にあまったこともあり、2006年にセニア地区にある千年樹の目録作成に着手しました。2017年に日本で公開されたスペイン映画『オリーブの樹は呼んでいる』を思い出しますね(まだ予告編が見られます)。映画のロケ地がこのセニア地区です。
昔から千年樹はお金になったらしく、この地区で代々続くオリーブ農家の知人が「おじいちゃんが酒飲みでね、酒代がなくなると千年樹を薪にして売っていたんだよ。幹が太くて薪がたくさんとれるからね(苦笑)」と話してくれたことがあります。
一本一本の木からサンプルを採取してラボラトリーで検査するには時間と費用がかかるため、千年樹の基準は幹の円周が3.50m以上、地表からの樹高は1.30m以上と決められました。現時点で目録には6,358本ものオリーブの千年樹があります。その98%がこの辺りだけで栽培されているファルガ種です。
今から2000年以上前、ローマ帝国がイベリア半島のほぼ全域を治めていた時代に、アンダルシアの港町カディスからローマに通じる全長約1500㎞のアウグスタ街道がつくられました。街道周辺にはオリーブとワインが植えられたと言われていますが、まさにセニア地区にも街道が通っていたのです。
目録を作り始めて思いついたのが、千年樹を付加価値として伝統産業であるオリーブオイル生産を盛り上げることでした。2015年には、Marca de Garantía Aceite Farga Milenaria という千年樹のファルガ種から生産したオリーブオイルの商標を登録。千年樹の果実のみを使って搾ったこと以外に、一定の品質を満たすことが条件になっています。また、認定を受けた12の搾油所で生産されたものに限られ、この商標を持つオリーブオイルは現在17あるそうです。
この10月、商標を持つオリーブオイルの収穫に立ち会うことができました。現場には商標を保証する機関のスタッフが来ていました。彼らは間違いなく千年樹から収穫し、ほかの木の果実が混じっていないことを確認するのです。収穫予想量がわかっているので、
そこの生産者さんに見せてもらったのですが、商標を持っている農園のどこに千年樹があるか地図上に表示されるアプリまであるのです。木をひとつ選んでクリックすると、登録番号や所在地、海抜、幹の円周などのデータが表示されます。ここまで管理されているのかと感動しました。
セニア地区には千年樹をめぐる3つのルートもあるので、オリーブ好きな方にはぜひおススメしたいです。私もまだどのルートも辿ったことがないので、コロナ禍が落ち着いたら行ってみたいと思っています。以下、各ルート紹介動画のリンクです。
また、今回お話をうかがったMancomunitat Taula del Séniaの理事ジャウメから、「ぜひ見てほしい!!」と勧められた美しい動画があったので、英語の勉強も兼ねてどうぞご覧くださいね。
https://www.youtube.com/watch?v=tj-5TilUTT8 (英語)
https://www.youtube.com/watch?v=x25AiidVcoo (ナレーションなし、音楽のみ)
それでは、hasta luego!!