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OLIVE JAPAN® 2023 国際オリーブオイルコンテストの舞台裏

今年度の「OLIVE JAPAN® 2023 国際オリーブオイルコンテスト」の審査結果が5月1日に発表されました。エントリー総数は702品。受賞商品はすべてこちらのページでご覧いただけますが、その舞台裏を知りたくOLIVE JAPAN® 実行委員会理事長であり一般社団法人日本オリーブオイルソムリエ協会理事長の多田俊哉さんに編集部が伺ってきました。審査結果の内容とともに今年度の審査会の様子をお届けします。【 OLIVE JAPAN® 2023 国際オリーブオイルコンテストの舞台裏 】

編集部: 審査会終了後のお忙しい中、よろしくお願いします。まずは今年度の審査会の様子を教えて下さい。

多田理事長:
今年のOLIVE JAPAN®国際オリーブオイルコンテストでは、3月28日より予備審査ならびに4月24日〜25日の本審査により厳正な審査を行いました。12回目を迎えた今年は、コロナ禍を経て4年ぶりに海外の審査員11名を招聘でき、日本人審査員6名を含め計17名のオリーブオイルの専門家から成る国際色豊かな審査員が参加しました。

OLIVE JAPAN® 2023 国際オリーブオイルコンテストの舞台裏

日本を含む12カ国から招聘した17名の審査員により厳格な審査が行われた

コロナ禍の3年間は日本人審査員だけによる審査を続けたことで、日本人審査員のレベルは格段に上がり、審査会では海外の審査員と風味や評価のディスカッションが活発に行われました。海外の審査員も会場でリアルに審査会に参加するのは3、4年ぶりの方が多く、多くの審査員がコンテストの緊張感ある空気の感慨に浸っていたようです。

OLIVE JAPAN®コンテストの大きな特徴の一つは、商品を審査員一人ひとりがテイスティングするだけでなく、テイスティングをした上でさらにディスカッションを行って賞を決めることにあり、リアルな審査会を行ってこそ厳格な審査が可能となります。海外の審査員も戻ってきて、OLIVE JAPAN本来の姿で今年のコンテストを開催できたことは非常に嬉しく感じています。

 

編集部: 今年度のエントリー状況にはどのような傾向が見られましたか?

多田理事長:
今年度のエントリー総数は702品、その中から最優秀賞8品、多田俊哉オリーブオイルソムリエ特別賞10品、金賞327品(特別賞含む)、銀賞229品(いずれも5月1日現在)ならびに各国ベスト賞を決定しました。

オリーブオイル生産量世界一のスペインの生産量が気候変動による少雨で半減する中、それでもスペインから250品近いエントリーがあり、また品質が良好であったイタリアからも珠玉のエントリーが130品とまさに真の国際コンテストを名乗るのに相応しいコンテスト規模となりました。

 

編集部: ぜひ、今年度の賞商品の傾向も教えて下さい。

多田理事長:
まずは最優秀賞を受賞された8品の生産者さん、輸入販売等に関わっている皆さん、本当におめでとうございます!最優秀賞8品の内訳はスペイン産2品、イタリア産4品、スロベニア産1品、アルゼンチン産1品となっています。

OLIVE JAPAN® 2023 国際オリーブオイルコンテストの舞台裏

OLIVE JAPAN® 2023 国際オリーブオイルコンテストで見事「最優秀賞」を受賞されたのははこちらの8品

この結果からもイタリアが品質的にも好調、スペインが厳しかったことは明らかですが、コンテストの出品点数もスペインは前年度比30〜40%減となり、スペインの作柄が非常に厳しい年だったことがうかがい知れます。例年なら、最優秀賞受賞商品は他を圧倒するすばらしい出来映えですが、今年は下位の賞との差は僅差で、優秀な生産者にとっても極めて厳しい年だったといえるのではないかと思います。また、品質的には好調だったイタリアでも、出品数は減っており決して作柄が良かったというわけではないでしょう。

実際産地を訪れると、昨年の地中海を取り囲む主要オリーブ産地では、春に雨が降らない、夏にも秋にも降らないという1年中通してほとんど天然降雨があてにできない年だったとの声を多く聞きます。灌漑設備が整う畑では灌漑でしのげたものの、大多数の生産者にとって天然降雨なしという状況は、まさに死活問題であったに違いありません。

 

編集部: スペイン、イタリア以外のオリーブ生産国の動向はいかがでしたか?

多田理事長:
東ヨーロッパから北ヨーロッパに近いクロアチア、スロベニアなど比較的地中海から離れた諸国はスペインほど気候変動の影響は受けず、年々生産者が技術を向上させて質の高いオリーブオイルを作り始めています。特にスロべニアは、エントリー数は6点しかなかったのですがその中から1点、最優秀賞が出ています。それも飛び抜けて良いできのオリーブオイルです。クロアチアも出品点数を増加させており、しかもどれも高品質だった印象です。そういう点では、ヨーロッパの中での産地の多様化には多いに期待が持てそうです。

OLIVE JAPAN® 実行委員会理事長であり一般社団法人日本オリーブオイルソムリエ協会理事長の多田俊哉さん

南半球では、アルゼンチンが品質的にも量的にも群を抜いています。今年度の南半球からのエントリーは少なくなりましたが、これはコンテスト開催時期の変更によるものだと推測しています。コンテスト開催が昨年の5月から今年は4月に前倒しになったことにより、収穫がコンテスト出品に間に合わない生産者も多かったのではないかと思われます。来年のコンテスト時期はまた、5月の中旬から下旬に戻して、南半球の人たちもエントリーできるように配慮していきたいと思っています。

 

編集部: 残念ながらメダル受賞に至らなかったオリーブオイルもあるのですね?

多田理事長:
702エントリー品のうち、約570品にはいずれかのメダル(賞)を授与していますが、残念ながら全体の約18%のオリーブオイルはメダルを逃しています。この数字は歴代のOLIVE JAPAN®コンテストの中ではかなり低く、品質基準の満たないいわゆる「欠陥」風味オイルのエントリーは非常に少なかったと思います。作柄の悪い年でありながらも、確実にメダルをとれるような商品を選んで出されていると思われます。

OLIVE JAPAN® 2023 国際オリーブオイルコンテストの舞台裏

ヨーグルトと酸味のあるリンゴで、時おり口の中を整えながら数時間にわたる審査を続ける

編集部: 審査過程で今年は口の皮があまり剥けなかったという話ですが、どういう意味でしょうか?

多田理事長:
スペインの傾向がそのまま全世界の風味傾向に影を落としている印象です。スペインの高品質オリーブオイル生産者の多くは、灌漑による潅水コントロールを当たり前のようにしていますが、いまだにスペイン生産者の67%は灌漑設備を有していないと言われていますし、灌漑設備があっても水のコストが高いため、果実の成長期である夏場以外は天然降雨に頼るという生産者も多いようです。そして、特に秋口に入ってからの降雨予測(というよりも期待に近い・・・)を見誤り、最適な収穫のタイミングを逃して多くの生産者が完熟気味のオリーブオイルを搾ったというのが実態のように思えます。

今まではスパイシーな風味のオリーブオイルを出してきた生産者の中にも、トロっとした甘いオイルを出品してきている生産者が少なからずいました。おそらく天然降雨を待ちすぎて収穫時期を逃して、過熟になってしまったのでしょう。それでも一定のレベルに至っていれば、もちろん金賞はとれますが、全体の印象としては完熟傾向が強かったです。

審査の過程で全品テイスティングを行うのですが、ピリッとした辛さを特徴とする生産者が多いスペインのオリーブオイルのテイスティングをしても、今年は口の中の皮はあまり剥けなかったことこそが、今年の風味の傾向を物語っています(笑)。

 

編集部: 読者にもファンが多い、イタリア産のオリーブオイルの傾向はいかがでしたか?

多田理事長:
イタリアもスペインと似たような傾向があったかもしれませんが、深刻な感染症に木が冒される悲劇を経験し、またスペインよりも圧倒的に規模の小さな生産者が多いこともあって、気候変動にも柔軟に対応している生産者が多いように感じます。というよりも、品質を軸にして生産者の二極化が進んでいる印象です。

イタリアからは4品が最優秀賞を受賞しました。面白いことにその4品の生産地はトスカーナ、プーリア(2品)、シシリアと見事に分散していました。そして何より、この4品は久々にイタリア品種の魅力に溢れるオリーブオイルでした!その中でも最も激戦であった量産品種のコラティーナ種の2品は正直、コラティーナ種でここまで香りを極めることができるのか!という出色の出来映えでした。さらにトスカーナ産、シチリア産の2品も、それぞれの地域の主力品種の新しい味わいを見せてくれてとてもうれしかったです。

 

編集部: オリーブオイルの品質はプロでも見極めが難しいようですが、私たち消費者はどのように「いいオリーブオイル」を選んだらよいでしょうか?

多田理事長:
ワインと同じように、銘柄指名できるようなものをいくつか覚える方法があります。日本に輸入されているオリーブオイルは極端に数が多いわけではなく、しかも賞をとっている銘柄は毎年ある程度決まっているので、毎年品質がぶれない銘柄を覚えていれば安定的に良いオリーブオイルを楽しんでもらえると思います。

これから輸入を始めたいという方がいたら、毎年継続していいものをつくっている生産者でインポーターが未だついていない海外銘柄はまだまだたくさんありますから、チャンスはあると思います。ぜひ、いい銘柄を探してチャレンジしてほしいと思います。

 

編集部: やはり、値段が高いオリーブオイルは高品質なのでしょうか?

多田理事長:
オリーブオイルの場合、値段と品質は比例しておらず、値段は良いオリーブオイルの目安になりません。オリーブオイルの店頭価格は、生産者や中間流通や販売者の利幅、為替等で違ってきます。

また、国による価格相場のギャップは大きくなっています。主要生産地でオリーブオイル相場が最も高いのはイタリアです。どのインポーターが生産者に買い付けに行っても提示される値段がダントツに高いです。イタリア国内のオリーブオイルの小売価格も、その生産量の少なさもあって他の生産国より相対的に高い水準にあります。同じEUでもポルトガルやクロアチアは、まだまだ比較的安い価格で調達できるでしょう。これは品質の差ではなく、オリーブオイルの各国相場で決まってくるので、消費者の方には、どこの国のオリーブオイルでもほぼ同じ値段で買える、などとは思わないでください。

イタリアのオリーブオイルにはイタリア産にしか無い美味しさ、またスペインのオリーブオイルにはスペイン産にしか無い美味しさがあります。そうした風味の個性は、価格とはまるで無縁ですが、残念ながらイタリア産は高くても買ってくれる人がたくさんいるので売る側が強気です。仕入れを行うには、買い負けしない覚悟が必要となってくる、ということです。いずれにしても、決して安くない買い物ですから、継続的に賞を受賞している商品、受賞歴を品質の確かな目安として選んでいただければと思います。

OLIVE JAPAN® 2023 国際オリーブオイルコンテストの舞台裏

毎年、オリジナルのデザインはOLIVE JAPANの雰囲気を盛り上げてくれます

 

編集部: 日本から出品されたオリーブオイルの今年度の傾向はいかがでしたか?

多田理事長:
今年度の日本の出品数は55品で、昨年度より若干増えました。ただし、実は最大産地である香川県・小豆島の出品数は意外と少なく、香川県以外の新しい産地、例えば九州が比較的多く、岡山、広島、東海エリアからのエントリーも多かったのが特徴でした。

日本のオリーブオイルの大きな特徴として、その年によって良かったり悪かったりの振れ幅が大きいということがあります。また特定品種への偏りが顕著で、どれをテイスティングしても同じような風味、といったこともよく経験します。

エントリー品のざっと半分ぐらいは品質が安定してきましたが、残り半分ぐらいは品質へのこだわりに疑問が感じられる品がまだまだ見受けられます。多くの日本人生産者がコンテストにエントリーしてくれることは嬉しいのですが、オリーブオイルの品質のことをさらに勉強した上で作っていただけるようになると、品質と量の両方での向上も図れるのではないかと思います。

 

編集部: 生産者はオリーブオイルの品質について、どのように学べば良いでしょうか?

多田理事長:
「生産者」としてのオリーブオイルの勉強とは、まず「オリーブオイル」は食品ですから、食品としての価値をきちんと理解していなければならないと思います。他人、特に海外主要産地の生産者の作ったオリーブオイルをテイスティングして、自分が作ったものと比べてみる、そんなところから勉強は始められるのではないでしょうか。

味わいの奥深い魅力を語れて初めてオリーブオイルの真価を理解できているということだと思いますが、自分の作った商品の相対的価値すら知らずにその品質は「最高」と思い込んでいる独りよがりなケースや、その全く反対に自信を持てずに悩んでいるようなケースも見受けられます。

また、「食品」を作る上での重要な食品法規や食品衛生の知識も欠かすことができません。こうした最低限の知識を獲得しながら、前年よりさらに品質の良いものを作ろうとする向上心と共に、どこまでの品質のものを何年で作ることを目指すのか、というマッピングができて初めて「生産者」としてのスタートラインに立てるのだと思います。

 

編集部: インポーターや販売する方もオリーブオイルを学ぶ必要はありますか?

多田理事長:
「なかなか売れない、利益が出ない」という声を耳にします。そんな時は「売る努力を正しい方向に向かってできているのか?」ということを改めて考えてほしいと思います。

新鮮なホタテや生牡蠣を買っても、ホタテや生牡蠣に合うオリーブオイルを小売店で探すことは現状は極めて困難です。サステナビリティという観点からブロックチェーンで生産、流通の透明化は一部進んでいますが、それにもホタテや生牡蠣に合うとは書いていません。小売店に私が行っても、ホタテや生牡蠣にあるオリーブオイルを買えないのです。

美味しい生牡蠣と相性抜群のオリーブオイルに出会いたいと考える消費者もいるはず、と

もしオリーブオイルをもっと販売したいということであれば、多くの消費者がオリーブオイルを購入するシーンで、何を求めているのか?何を商品選びの決め手にしているのか、といったニーズに向き合った対応はまだまだできるのではないかと思います。

消費者が、オリーブオイルを料理に使いこなすことを想定して、コンテストの結果には2年前より「オリーブオイル風味インデックス®」という風味の特徴を可能な限りシンプルに盛り込んだ、そんな指標も公表しています。「味覚」「香り」そしてちょっと耳慣れない「レトロネーザル」という喉から鼻に抜けていく香気の有無を表す指標です。

私たちオリーブオイルソムリエ®は少しでも多くの香りや味わいを感じ取ることが仕事ですから、時にオリーブオイルの風味に敏感すぎるきらいがありますが、オリーブオイルにそれほどなじんでいない消費者は、もしかしたら、こってり甘いオリーブオイルをスパイシーだと感じるかもしれません。

そんな時は玄人感性ではなく、消費者にもより伝わる「オリーブオイル風味インデックス®」に書いてあるわかりやすい簡単な風味表現で割り切って伝えた方が、食材との相性を伝えやすいのではないかと考えたわけです。

こうした例は一例ですが、消費者がよりオリーブオイルを買いやすくする工夫はまだまだできるはずだと思います。売れないことを嘆くのではなく、消費者が知りたい、知らないことに手を差し伸べるというのはあると思います。

 

編集部: ぜひ、賞メダルの見方を教えて下さい!ずばり、私たちは最優秀賞をとったオリーブオイルを買えば良いのでしょうか?

多田理事長:
オリーブオイルを使い始めの人にお薦めするのは、ずばり銀賞受賞のオリーブオイルです。それはなぜか?

最も貴重で、通常だったら一生のうちに出会えるか出会えないスター!最優秀賞のオリーブオイルは超一流の料理人でも使いこなすのが難しいオイルです。スターには個性がつきものですよね。香りも強く、味も苦さも辛さも強く、ハーモニーも絶妙でオリーブオイルだけで完結しているのが最優秀賞のオリーブオイル。こんなスター性の高いオリーブオイルは合わせる食材を選びます。ぜひ、そのままで、オリーブオイル自体を味わってもらいたいと思います。

OLIVE JAPAN® 2023 国際オリーブオイルコンテストの舞台裏

一方、金賞、銀賞になるにつれて、お料理や食材と合わせやすくなります。銀賞のオリーブオイルは辛さ?苦さ?甘ったるさ?「何かが足りない」オリーブオイルで、足りないこと自体が魅力です。何かが足りないところに、食材の風味がポコっとはまる。そうすると相互に補い合って口の中でベストマッチが生まれます。銀賞のオリーブオイルは食材と補い合い、ハーモニーを醸し出せる魅力的なオリーブオイルです。料理人にもシルバー受賞オイルが好きな人が多いようです。

では金賞のオリーブオイルは?金賞のオリーブオイルは風味がすべて揃っている最もオリーブオイルらしいオイルです。苦さと辛さが揃っていて、香りと味わいの方向性が同じ場合、金賞として選ばれます。複雑な味わいが特徴なので、食材との相性が良ければ食材の風味を際立たせ、フレッシュな後味がすばらしい余韻を奏でてくれることと思います。

編集部: 最後に、数々の受賞オリーブオイルを試せる機会がこのGWにあるのですね?

多田理事長:
はい、高品質の証であるコンテストで受賞したオリーブオイルをご試食、ご購入いただけるオリーブの祭典「OLIVE JAPAN®SHOW☆まるしぇ」が今年も東京・銀座で開催されます。GW中開催になりますが、お気軽にご家族お友達と一緒にお出かけいただければと思います。皆さんのお越しを会場でお待ちしております。

開催概要:
2023年5月4日(祝木)11:00-18:00 及び
2023年5月5日(祝金)10:00-17:00 の2日間
会場:コートヤードマリオット銀座東武ホテル バンケットホール(東京都中央区)
※入場無料・予約不要  ※4日12時から最優秀賞の表彰式を開催
OLIVE JAPAN® SHOW☆まるしぇ 2023詳細

 

編集部:
多田理事長、本日は貴重なお話を伺わせていただきありがとうございました。「eオリーブオイル選び」では、全受賞商品を商品写真付きで検索していただけるページを準備中です。そちらもぜひご期待ください。

【 OLIVE JAPAN® 2023 国際オリーブオイルコンテストの舞台裏 】

   
     
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