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オリーブオイルの未来を拓く国際シンポジウム
現地レポート ”オリーブオイルと健康”
【オリーブ世界一の国 スペインから】

Hola!!  スペインでは春の訪れを告げるアーモンドの花の季節です。さて、オリーブオイルの健康効果にに関する研究はこの20年で一気に進み、現在も世界各地で活発な研究活動が行われています。アメリカの名門イェール大学は2018年から 『オリーブオイルと健康』という国際シンポジウム を開催しており、昨年12月には第3回目のシンポジウムが世界一のオリーブ生産地ハエンで開かれ、私も出席してきました。今回はその現地レポートをお届けします。

第3回イェール大学国際シンポジウム『オリーブオイルと健康』(協賛:ハエン県庁)はハエン大学との共催で12月9日から12日の4日間、開催されました。この時期はちょうどコロナ感染が世界に再び拡がり始めた頃で当初の予定より出席者は減ってしまったそうですが、それでも会場はオリーブオイルの新たな可能性の学びに熱心な人たちの熱気に包まれていました。

開催初日の夕方、ハエン大学の講堂に県知事や市長、大学学長、国際オリーブオイルカウンシルのディレクターが一同に介し、シンポジウム開催委員会による産学共同のオープニングセレモニーがありました。

『オリーブオイルと健康』という国際シンポジウム

「OLIVE OIL & HEALTH」シンポジウムのオープニングセレモニーの様子

その後、一同はバスに乗って立食式のオープニングパーティー会場になったテラ・オレウム・オリーブ博物館に移動。パーティーは、じゃがいも、トマトソース、カリフラワーの各食材が3種類のオリーブオイル(ピクアル種、オヒブランカ種、アルベキーナ種)のどれにもっともマッチするかスマホを使って集計する面白いフードペアリングから始まりました。

『オリーブオイルと健康』という国際シンポジウム

フードペアリングでスタートしたオープニングパーティー

2日めは見本市会議場にて朝9時から夜8時までびっしりと発表やそれに対する質疑応答があり、参加者の熱い議論が交わされました。途中でオリーブオイルのテイスティングセッションもあり、若草のアロマが香しいハエン産の新油に一同酔いしれました。

この日は『健康と疾病:近年の進歩』が最初のテーマで「脳と心臓血管の健康」と「乳がんと結腸がん」に関する研究発表がありました。高齢化社会の今、わたしは特にアルツハイマーとオリーブオイルの関係についての研究がより進むことを期待しています。また、オリーブオイルの発煙点(油脂を加熱していくときに煙が発生する温度)が高いことが、調理時に発がん性物質の発生リスクを減らすという話もとても興味深かったです。私に医学の知識があったら、もっと深く理解できたのに…と少し残念に思いました。

『オリーブオイルと健康』という国際シンポジウム

ステージでは世界中から集まった研究者や専門家の発表が続きます

続いて『生物経済と循環型経済』『農業と気候変動』『オリーブ農園と気候変動』、そして『プラスティックフリーのエキストラバージンオリーブオイル』『オリーブ農園とLIFE Olivares Vivosプロジェクト』『地中海におけるオリーブ栽培の持続可能性促進のための新しい取り組み方』の発表がありました。オリーブ畑で生物多様性を回復させようという取り組みのLIFE Olivares Vivosは、私が以前から関心を抱いていたプロジェクトです。

スペイン語のテイスティングをリードしたのは私の恩師でもあるハエン大学教授でした

3日目も朝は9時にスタート。『フェノール成分』をテーマに「高真空技術:バージンオリーブオイルの搾油率と品質への影響」「質量分析を用いたオリーブオイル分析への実践的アプローチ:ポリフェノール」「オリーブオイルにおけるフェノール画分組成と分析」など、専門性の高い話が続き、コーヒーブレイク後は『生物経済と循環型経済の成功ビジネス事例』として「オリーブのポリフェノール:現在と未来」等オリーブオイルと健康だけでなく、オリーブオイルが社会に及ぼす影響に関するあらゆる発表があり、オリーブオイルがわたしたちの社会のあらゆる活動や生活と密接に関係していることを改めて実感しました。

コーヒーブレイクの際にはオリーブオイルを使った料理のデモンストレーションも

昼食後はオリーブオイルの『マーケティング』について、4人のスピーカーが登壇。コロナ感染拡大で直前に渡航を断念された日本オリーブオイルソムリエ協会の多田理事長も、オンラインで日本市場について話され、この業界での日本人の存在感を感じられて嬉しく思いました。そしてクロージング・セレモニーへ。

多田理事長のオンライン登壇では、日本人の食の嗜好に関する話も聞くことができました

この夜はハエン市内を見下ろす山の上にあるサンタ・カタリナ城に隣接するパラドール(スペイン国営の高級ホテル)で夕食会が開かれ、どのテーブルも話題は尽きず日付が変わってもまだまだ盛り上がっていました。

『オリーブオイルと健康』という国際シンポジウム

パラドールの重厚かつ優雅なダイニングルームで開かれた夕食会

4日目の朝は会場でシンポジウムのまとめの後、希望者のみが参加するバスツアーです。50㎞弱離れたバエサでの旧市街ガイドツアーにカスティージョ・デ・カネナの農園見学、そして農園所有の施設で立食の昼食会。天気も良くリラックスした時間を過ごすことができました。

ガイドツアーでは世界遺産のバエサ旧市街へ

ちなみに、シンポジウムの公式言語は英語とスペイン語です。英語とスペイン語の両方が堪能な人以外、出席者はイヤホン付きのレシーバーを使い発表を聴いていたのですが、どの話も専門的なため「これを日本語で聴くことができたらどんなにいいか!!」と繰り返し思ってしまいました。

オリーブオイルの研究が世界各地でこれほど熱心に進んでいることには、わたしたちの健康維持に不可欠な食材としてのオリーブオイルの大きな未来への可能性を感じました。きっとこれからも新たな分野での研究が始まり、既存の研究はさらに進歩することでしょう。シンポジウムの様子はこちらの動画からご覧いただけます。来年はローマで開催されるそうなので、興味のある方はぜひ足を運んでみてください!

プレミアムオリーブオイルの生産が終わっても収穫は続きます

ところで、少しの間こちらでの執筆にお休みをいただいていましたが復活いたしますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、hasta luego!! (田川敬子)

   
     
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