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オリーブオイルのパッケージ界に革命を起こした 新進デザイナー、イサベル・カベージョ【オリーブ世界一の国 スペインから】

●SNSがきっかけで実現した憧れのデザイナーとの対面

世界一のオリーブオイル生産国スペインには数え切れないほど多くのオリーブオイルのブランドがあります。そして、オリーブオイルボトルのデザインもブランドの数だけ多彩です。ある時、私がステキだと感じているボトルは、実は同じデザイナーさんが手掛けていたんだ!ということを知りました。幸運にもそのデザイナーさんからFacebookで友達申請を頂いたときに「あなたのデザインが大好きです。あなたのファンです!」と告白しました(笑)。この6月、念願かなってそのデザイナーさんを訪ねる機会に恵まれたので、今回はその時に聞いた話を披露いたします。【 オリーブオイルのパッケージの界に革命を起こした 新進デザイナー 】

わたしが訪ねたのはイサベル・カベージョというデザイナーです。イサベルはグラナダ大学で絵画を専攻しましたが、画家として生計を立てることは難しいと考えグラフィックデザイナーの職に就きます。その翌年には独立し、10年後にデザイン事務所 Cabello x Mureを立ち上げます。現在、Cabello x Mureはパッケージを担当するイサベル・カベージョとロゴ開発を担当するアナ・ムーレの2人のデザイナーのほか、イサベルの旦那様でディレクターのエンリケと数人の事務系スタッフが働いているこじんまりとしたデザイン事務所です。

オリーブオイルのパッケージ界に革命を起こした 新進デザイナー

左からイサベル、エンリケ、アナ。3人とも佇まいもとってもクール

●初めて手掛けたオリーブオイルボトルが、国際パッケージデザインコンテストで金賞を受賞

イサベルがエキストラバージンオリーブオイルのパッケージデザインを初めて手掛けたのは約10年前のこと。ハエンの生産者から「僕は世界一のオリーブオイルをつくるから、君に世界一のパッケージをお願いしたい」という依頼がきたそうです。そして、この時デザインしたパッケージが2013年のペンタワードで金賞に輝いたのです(※ Pentawards:2007年から毎年開催されている国際パッケージデザインコンテスト)。これを機にオリーブオイルメーカーからの依頼が増え、現在はパッケージデザインの8割はオリーブオイル、2割はワインやはちみつ、ジャム、パプリカパウダーなどのグルメ食材のデザインをしているそうです。

はじめてデザインしたオリーブオイルClaramuntの前衛的なボトル

この話には続きがあり、イサベルが初めてボトルのデザインしたClaramuntのオリーブオイルは今年2021年、世界が注目するIOC(国際オリーブカウンシル)主催のマリオ・ソリーナス賞グリーンでインテンスなアロマ部門の1位になったのです。パッケージも中身も最高のクオリティのエキストラバージンオリーブオイルですね!

今までに手掛けたパッケージは少なくとも300作品はあるそうで、この10年で160もの賞を受賞しています。事務所のサイトにパッケージの一部が掲載されているので、ぜひご覧ください。うっとりしてしまいます(笑)。なお、今年度のペンタワードでもイサベルが手掛けたオリーブオイルのパッケージがファイナリストに残っているそうなので、発表が楽しみです。

今年のペンタワードのファイナリストに残っているオリーブオイルのパッケージ。日本の切り絵のようにも見えませんか?

●パッケージデザインは企業の戦略そのもの

伝統的なオリーブオイルのボトルといえば、四角く細長い黒か濃い色の遮光瓶に縦長のラベルが貼られているものが一般的でした。その殻を破り、色も形も自由にデザイン性が際立つボトルを提案することに迷いはなかったと彼女は言います。「変化に不安が伴うのは当たり前のこと。その不安を取り去って納得してもらえるプレゼンテーションをするの」と話すイサベルに、デザインの開発のプロセスを聞いてみました。

最初にどんなパッケージにしたいかという要望のほか、商品名の由来、農園の所在地やヒストリー、将来のプラン、ブランディングなど細かいヒアリングを行い、それから徹底的に“調査”を行うそうです。イサベルは民族文化や伝統工芸が好きで、その土地の歴史や文化、風習まで掘り下げて調べるとのこと。「たまに生産者さん以上にその土地に詳しくなっちゃうの」と笑いながら話してくれました。デザインのわき役として描かれているモチーフに、歴史的な意味が隠されていることもあるのだとか。ひとつひとつのデザインを見ながら、そこに描き出されたものの意味を問いたくなりますね。

このボトルを見るとイサベルが民俗文化が好きなことが伝わってきます

ヒアリングから最初のプレゼンまでは平均1か月。急ぐといい結果は出ないため、デザイン完成まで少なくとも6か月はかかると言います。また、依頼主への提案はデザインだけではなくボトルやキャップにも及ぶため、ボトルやキャップのメーカーとも密にコンタクトを取っているそうです。

「パッケージデザインはただ見た目がきれいだとか格好いいというだけでなく、企業の戦略そのものなの。私のパッケージを手にしたときに、ここに何が込められているんだろうって考えてもらえると何より嬉しい」とイサベルは言います。

パッケージをリニューアルするとなると企業側にはそれ相当のコストが伴うわけですが、ズバリ「イサベルのデザインに変えることでどんな効果があるの?」と聞いてみました。すると、間髪入れずに「たいていどこからも売り上げが伸びたって言われるわ」とにっこり。5月にIOC職員に聞いた最近のオリーブオイル業界の傾向について書いたときに、“オリーブオイルボトルのデザインの重要性”も挙げていたことを思い出しました。イサベルが手掛けたパッケージを見ると、思わず買ってしまいたくなりますよね。

オリーブオイルのパッケージ界に革命を起こした 新進デザイナー

事務所の一室にずらりと並んだイサベルがデザインしたパッケージ

僭越ながら日本製オリーブオイルのパッケージはまだまだ発展途上という印象があるので、これから進化していくことを期待します。

雑誌やWEBで見るイサベルは尖ったアーティストのイメージだったので緊張して出かけたのですが、実際に会ったイサベルはとても柔らかで温かくキュートな女性で、ますますファンになってしまいました。それでは、hasta luego!!(田川敬子)

オリーブオイルのパッケージ界に革命を起こした 新進デザイナー

2013年に受賞したペンタワードの盾を手に

   
     
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