オリーブオイル文化と共に生きる決意をした夫婦が運営するオリーブ博物館と宿泊施設 【オリーブ世界一の国 スペインから】
Hola!! お元気ですか? スペインではオリーブのつぼみが早くも顔を出し始めました。1月にオリーブオイル文化に触れる観光“オレオツーリズム(オリーブオイルツーリズム)”の事例をご紹介しましたが、今回はオリーブオイル生産者さんが運営するオリーブオイル博物館と宿泊施設の話です。【 オリーブオイル文化と共に生きる夫婦運営のオリーブ博物館と宿泊施設 】
この話は、生産者さん家族の物語から始まります。スペイン東部カステジョン県の内陸にあるセゴルベ出身のホセ・ルイスは家族が所有するオリーブ畑に囲まれて育ち、大人になり電気系エンジニアの仕事に就きました。奥さんのテレサは同郷の薬剤師。ある日2人は、故郷セゴルベ市役所が「旧市街にある搾油所跡とその建物を再利用するプロジェクト」案を募集していることを知ります。そこはホセ・ルイスのお父さんも使っていた懐かしい搾油所でした。
この募集にピンときた2人は、搾油所跡は博物館、それ以外は宿泊施設に改装してオレオツーリズムを町おこしのツールのひとつにするアイデアを提案し、見事採用されたのです。かくして2005年にアパートメントスタイルの宿泊施設、2006年にはオリーブオイル博物館をオープンします。
オープン当初は2人とも仕事をやめる決心がつかず、とりあえずはテレサの家族がそこで働くことに。しかしその後数年たち、夫婦はフルタイムで働き子育てをする日々にストレスを感じたこともあり、2010年に退職して帰郷。2人で博物館と宿泊施設を運営しオリーブオイル文化とともに生きる生活を始めました。2人は公認観光ガイドの資格も取得し、ホセ・ルイスはオリーブオイル生産に従事しオリジナルブランドを立ち上げ今に至ります。
こじんまりした博物館は2フロアからなり、搾油所があった地下にはホセ・ルイスのお父さんがオリーブの実を挽いた石臼や圧搾機、備え付けの陶器製オリーブオイルがめなどが展示され、オリーブオイルの歴史ビデオを見ることもできます。ビデオはスペイン語がわからなくても絵を見るとなんとなく内容は
2階には体験スペースと売店があり、もちろんテイスティングを教えてもらうこともできます。AEMOというオリーブ関連の協会が毎年オリーブ文化普及に努めた個人や組織を表彰するのですが、この博物館が1位に選ばれたことも過去にあるそうです。
同じ建物内に宿泊施設は全6室あり、どの部屋もキッチンとバスルームがついたシンプルだけどとてもセンスの良いアパートメントスタイルになっています。
オリーブ畑は町から離れているので車がないと行けないのですが、すぐ近くに20品種のオリーブを1本ずつ植えたスペースがあります。秋になると、品種による果実の特徴がわかって面白いそうですよ。
ホセ・ルイスとテレサは、2010年に第二子にあたる娘さんが生まれた際に何か“一生もの”をプレゼントしたいと思いコロネイキ種のオリーブを、兄にあたる息子さんのためにフラントイオ種の栽培をはじめます。どちらの品種も今はたわわに実をつけるようになり、新たに『クラウディア(娘さんの名前)』というコロネイキ種のオリーブオイルと、『マルティン(息子さん名前)』というフラントイオ種のオリーブオイルが生まれました。また、もともと畑にあった樹齢100歳以上の土着品種セラーナ・デ・エスパダンの『エル・アブエロ(おじいちゃんの意味で、ホセ・ルイスの父親のこと)もあり、さらにこの3品種のブレンドを『ラ・ファミリア(家族)』と名付けています。ホセ・ルイスとテレサの家族愛とオリーブ愛に思わず胸が熱くなりました。
セゴルベは特に有名な観光地というわけではありませんが、昔は城壁に囲まれていたそうで今もその名残が残っています。また、人口1万人にも満たない小さな町にも関わらず13世紀に建てられた大聖堂(司教座を持つ教会堂のことで、スペイン中で100余り存在)があることからも歴史を感じさせる田舎町です。
週末をのんびり過ごすにはもってこいの場所なので、ホセ・ルイスとテレサの宿泊施設とオリーブ博物館には多くの人が訪れます。カップルや家族連れ、またリタイアした北ヨーロッパ人夫婦が特に多いとのこと。バレンシア市内からはバスで1時間少々の距離なので、これを読んでいる皆さまも機会があればぜひいかがでしょうか?
Bellugaオリーブオイル博物館(西語、英語、仏語)
Belluga宿泊施設(西語のみ)
それでは、hasta luego!!(田川敬子)