【オリーブ世界一の国 スペインから】
オリーブオイルの技術コンサルタントという誇り高き職業人の話
【オリーブ世界一の国 スペインから】
Hola!! 世界のオリーブオイルの約半分を生産するスペインにはオリーブオイル業界で働く人も多く、職種も多岐に渡ります。その中のひとつに「技術コンサルタント」という専門職があることはご存知ですか。スペイン国内だけでなく、時に南米でも広く活躍する技術コンサルタントのミゲルとゆっくり話す機会に恵まれました。
オリーブオイルの技術コンサルタントは、専門領域が栽培や搾油、テイスティング等の専門分野に分かれており、広範囲に指導できるコンサルタントはスペインで一桁しかいないと言われています。そのうちの一人がミゲルなのです。大量のオリーブオイルを生産しているスペインでも、誰もが最新の知識を備えてオリーブを育て搾油をしているかというと、実はそうではありません。栽培がうまくいかなかったり、望むようなオリーブオイルを搾れないこともあれば、思うように売れないことも。その指導にあたるのがコンサルタントです。
ミゲルはスペイン東部カステジョン県の内陸にある小さな町に生まれ、現在もそこに住んでいます。そこは昔からオリーブやアーモンドの栽培が盛んな地域。ミゲルのおじいさんは収穫に使う布や搾油マットを作る職人でした。家族専用のオリーブ畑もあり「物心ついたころから祖父や父に連れられてオリーブ畑や搾油所に行き、そこで遊んでいたんだ。オリーブオイルを絞り終えた後の固まった搾りかすが、遊び道具だったんだ」と懐かしそうに話してくれました。
「僕が兵役から戻ってきたちょうど20歳の学生だった頃、スペインのオリーブオイル業界はそれまでの圧搾(プレス)機から遠心分離機を使った搾油に移行する変革期でした。ある日、父親から『地元のオリーブオイル業界で将来を担う人材を探しているから、お前がやりなさい』と半ば強制的にセビリアやハエンの専門機関の研修に送り出され、それが僕の技術コンサルタントとしてのキャリアのスタートとなりました。地元に戻ってきてからは様々な現場で働く機会に恵まれて、オリーブオイルに関して広範囲に及ぶコンサルティングを行うために充分な知識と経験が蓄えることができたのです。」
「これまでは生産者に対しテイスティングや搾油指導をメインに行ってきたのだけど、最近はオリーブの木に注目しはじめて、木の栽培指導にも力を入れ始めました。単にクライアントの要望に応えるだけではなく、この業界の将来を見据えて、オリーブオイルが“エキストラバージン”であることや有機栽培の重要性について指導をすることも増えてきました。時には議論が熱くなり口論になることもあるのだけどね(笑)」と茶目っ気たっぷりの少年のような瞳で話します。
「1年でもっとも忙しいのは収穫時期。早摘みで高品質のオリーブオイルを搾る期間は決まっているので、ほんの2~3週間の間にスペインのあちこちの搾油所へ出向きます。寝る間がないほど忙しく、家を空けることになって家族に申し訳ないけれど(スペイン人にとっては家族一緒にいることが何よりも大事!)これが一番好きな仕事なんだ。」その年初めてのオリーブオイルが出てきた瞬間の生産者さんの感激した顔を見ると、なにものにも代えがたい幸せを感じるそうです。でも、実は何枚か見せてもらった写真では、ミゲルが誰よりも誇らしく幸せそうな満面の笑みを浮かべていました(笑)
日本に輸入されているエキストラバージンオリーブオイルにも、ミゲルがコンサルタントをしている会社の商品がありますので、皆さんもミゲルの技術指導の成果の賜物のオリーブオイルを口にしたことがあるかもしれませんね。
それでは、hasta luego!!(田川敬子)